リサイタル開催のお知らせ
皆さんこんにちは!
大人のピアノ教室『かなくぼピアノ教室』 講師の金久保亮佑です!
このたび講師によるリサイタル開催が決定いたしましたのでお知らせいたします。
目次
金久保亮佑 ピアノ・リサイタル 2022
◆日時 2022年9月25日(日) 13:30開場 14:00開演 ◆会場 やなか音楽ホール(西日暮里駅 徒歩4分) ◆プログラム リスト: 愛の夢第3番 オラトリオ《キリスト》による2つの管弦楽楽章 イェディディア: ピアノソナタ第5番
会場アクセス
曲目解説
リスト:愛の夢第3番
リストといえば、やはり超絶技巧を駆使したピアノ曲で華々しいイメージが一般的だ。しかし、プログラムの1曲めに置いた愛の夢第3番は、どちらかといえばリストの詩的で人情深い人物像が全面に押し出されている印象がある。後述する3曲のオラトリオもすべてリストの華々しいイメージとはすこし遠いところにある印象だ。
リストの作品はピアノ曲のみならずあらゆるジャンルに存在しており、内容も極めて多様性に富んでいる。彼の華々しい一面は、その数ある作品の中の氷山の一角にすぎない。今回の演奏会では、いずれの作品もそういったイメージとは異なった作品を用意した。
《愛の夢第3番》はリストの数あるピアノ曲の中でも最もよく知られた作品のひとつ。
愛の夢は『3つの夜想曲』という副題を持つ3曲からなるピアノ曲で、本曲はその第3曲目として作曲されたもの。当初はソプラノ向けの歌曲として作曲されたものをピアノ独奏用に編曲した作品である。
O lieb, so lang du lieben kannst!(おお、愛しうる限り愛せ!)という原曲の歌詞からは人間の恋愛感情を想起させるが、そうした内容ではなく、人類の理想の愛といった壮大なテーマを歌い上げている。
リスト:オラトリオ《キリスト》による2つの管弦楽楽章
リストは生涯で3曲のオラトリオを作曲している。作曲された順に《聖エリザベートの伝説》、《キリスト》、《聖スタニスラフの伝説》の3曲である。この記事を読んでいるほとんどの方は初めて聞く曲名ではないだろうかと思う。《聖スタニスラフの伝説》は未完に終わっており、残りの2曲も世界でも数年に一度演奏されるかどうかという、極めて演奏機会が稀な作品であるからだ。
こういった演奏機会が稀な作品であるにもかかわらず、リストはこれらのオラトリオの中から数曲を選んでピアノ独奏用に編曲を残している。今回取り上げる作品は、《キリスト》の中から第4曲と第5曲をピアノ独奏用に編曲したものだ。原曲では第1部『クリスマス・オラトリオ』のクライマックスを飾る2曲として位置している作品である。
リストは自身のオーケストラ作品をピアノ独奏用に編曲するということをしばしば行っている。有名なピアノ曲では《メフィスト・ワルツ第1番》、《2つの伝説》なども管弦楽版が存在している。特筆すべきは編曲の完成度の高さである。リストの頭の中ではオーケストラとピアノの音色が完璧に対応しており、どちらも楽器としても魅力が最大限引き立つよう配慮されている。こういった作曲者の優れた一面は、もっと知られても良いのではないかと個人的に思う。
第4曲『飼い葉桶の羊飼いの歌』はベートーベンの《交響曲第6番「田園」》などでよく知られたパストラルである。曲は絶えず平和的な世界観を描写している。曲の中盤でクライマックスに達し、オーケストラの合奏がハ長調で華々しく奏でられ、キリストの生誕を祝福するかのようである。最後は十分な時間をかけて静かに終わる。
第5曲『東方三博士―行進曲』は全曲の静けさを引き継いで、意味深な行進曲で始まる。途中聖歌風のエピソードを挟みながら、最後でリストらしい華々しいクライマックスを形成している。最後はハ長調で堂々と締めくくっている。
イェディディア:ピアノソナタ第5番
イェディディアという作曲家の名を初めて聞く人も多いだろうと思う。イェディディアは1960年イスラエルに生まれ、現在はアメリカ・ニューヨークで音楽教室を主宰しながら作曲家、ピアニストとして活動している。この現代において優れたコンポーザー・ピアニストとして評価されている。幼少期よりピアノを学び、15歳で作曲家の道に進むことを決意。その後ジュリアード音楽院の作曲科で学び、1987年、89年にはジュリアード作曲コンクールで入賞するなど実績を残した。
ピアノ・ソロをはじめ、室内楽、オーケストラ、民俗音楽など幅広いジャンルで作品を書いている。またクラシック、ジャズを問わず演奏するピアニストとして、またアコーディオン奏者としても活躍している。その音楽に対する幅広い教養の深さと特徴は、リストの「多様性」を思わせるところがあるように思う。
今回そんな「多様性」を特徴とする彼の作品の中から、ピアノソナタを選んでみた。
イェディディアはこれまでにピアノソナタを6曲作曲している。その傾向としては単一楽章形式を好んで採用していることや、ジャズ風の和声の多用していることが挙げられる。また彼自身の発言によるとストラヴィンスキー、プロコフィエフ、スクリャービンといった作曲家から影響を多大に受けていることが伺える。ピアノソナタという”ガチ・クラシック”を作曲している一面からは、彼が民俗音楽のような楽天的な音楽を作曲しているとは、到底想像がつかないだろう。
それはさておき、今回演奏する《ピアノソナタ第5番》は6曲の中でもその巨大さが際立っている。
様々な縁があってこの作品は2018年に日本で世界初演が行われたが、その際の演奏時間は65分にも達した。これは切れ目のない単一楽章のピアノソナタとしてはかつて無い規模の作品である。そのあまりの巨大さから、被献呈者マルク=アンドレ・アムランはこの曲を「モンスター」と称したという。
その巨大な存在感とは裏腹に、この曲の構成要素はシンプルである。3連符を主体とした第1主題、スケルツォ風の第2主題、そして第1主題をもとにしたフガートで構成されている。しかしいずれの主題も巨大であり、その間に挟まれる緩徐楽章的なエピソードもまた巨大である。その巨大な構成を支える主要な動機がいくつか存在し、全曲を通して一貫して使用されているのである。
曲の終盤では、カタストロフィカルな和音の連続でまるで宇宙の創造を思わせるものがある。正直体力的にも演奏するのが大変だが、聴く方も空間がねじ曲がらんばかりの音の数々に、猛烈に体力を要することであろう。
この曲のすべてを語ろうとすると、その文章の構成要素もまた巨大なものになってしまうので、ここでの解説はこのぐらいにしておこうと思う。いずれまたこの曲の解説に特化した記事、もしくはホームページを作成するので、興味がある人は読んでほしい。
少しでもこの曲に興味を持ってくれたなら、私と一緒にこの曲を最後まで味わい尽くすという「挑戦」に挑みに来て欲しい。
チケット販売ページ
チケットぴあの販売ページに飛びます。
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2213310
大人のピアノ教室「かなくぼピアノ教室」講師。理系大学院を卒業→就職→退職してピアノ講師に。社会人経験を生かして、大人の方向けにピアノ教室を運営しています。