
大人からでも間に合う!ピアノ上達を阻む「5つの壁」を突破する方法

はじめに
「昔から弾きたかった」「子どもの頃に少しだけ習っていた」「定年や子育てが一段落して再開したい」——大人のピアノ学習者にとって、クラシックピアノは“憧れのやり直し”。
ところが、いざ鍵盤に向かうと
- 譜読みが進まない
- 両手が合わない
- 時間がない
さらに…
- 音が汚い
- モチベーションが続かない
なんてこともありますよね。
この記事は、そんな“5つの壁”をすぐに実践できる手順で乗り越えるための、充実ガイドとして書きました。
どうぞご覧ください!
壁①: 譜読みが遅い・苦手
譜読みはピアノ奏者なら誰もが一度はぶつかる課題です。
ヴァイオリンやフルートなどと違い、2段の譜面(大譜表)を読まなければならないからです。
解決に向けて―まず押さえる“3原則”
- 拍子と拍感を先に掴む
- 音符同士の距離(度数)を把握
- 形で読む(和音・分散和音・スケール進行などを“形”で認識)
原則1:拍子と拍感を先に掴む
なぜ拍子が最重要なのか
楽譜を読むとき、多くの人は音の高さから読み始めますが、実はリズムの骨格を先に理解することが譜読みスピードを劇的に向上させます。
拍子は音楽の「呼吸」です。3/4拍子なら「ワルツの揺れ」、4/4拍子なら「行進の歩み」というように、拍子そのものが音楽の性格を決定づけています。
原則2:音符同士の距離(度数)を把握
一音ずつではなく「関係性」で読む
譜読みが遅い最大の原因は、すべての音符を一つずつ「ド・レ・ミ…」と読んでいることです。これでは処理速度に限界があります。
代わりに、音と音の「距離感」を掴むことで、飛躍的に読譜速度が上がります。
原則3:形で読む(和音・分散和音・スケール進行などを“形”で認識)
よく出るパターンを「形」として認識
楽譜には繰り返し登場する形・定番パターンがあります。これらを個別の音符としてではなく、一つの形として瞬時に認識できるようになることが、譜読みの秘訣です。
壁②: 片手は弾けるのに両手で崩れる
なぜ両手だと難しい?
片手だとピアノが弾けるのに、両手になると弾けなくなる主な理由は、ピアノ演奏が指だけでなく、腕、胴体、脚など全身の複雑な協調動作を必要とする脳の作業であるにもかかわらず、身体の構造や動きに対する脳内イメージが不正確であるためです。
具体的には以下の点が挙げられます。
指偏重の考え方と全身の協調性の欠如
多くのピアニストは「ピアノは指で弾くもの」という伝統的な考え方に固執し、指以外の身体の部分(腕、肩甲骨、鎖骨、胴体、脚など)の動きや支えを軽視しがちです。これにより、全身が協調して動くべきところで、一部の部位が固定されたり、無理な動きをしたりします。
身体の「気づき」の不足(身体からの解離)
全身への包括的な「気づき」が欠けていると、意識されていない部分に不必要な力が入り、身体全体のバランスが崩れてしまいます。この緊張は、片手での比較的単純な動きでは目立たなくても、両手で異なる、より複雑な動きを同時に行う際に、演奏をぎこちなく不安定なものにします。
動きの質の低下
不正確な脳内イメージは、相反する筋肉が同時に緊張することや不自由なポジション、静止した筋肉の働き、過剰な力による打鍵といった「質の悪い動き」を引き起こし、身体に負担をかけます。これらの要因が両手の複雑な演奏において、動きの自由さを制限し、パフォーマンスを妨げます。
したがって、両手でスムーズに弾くためには、指だけでなく全身の動きを統合し、正確な脳内イメージに基づいた質の高い動きを習得することが不可欠です。
解決方法
解決のカギは3つのステップです。
ステップ1:自分の身体を知ろう
ピアノは指だけでなく、身体全体のチームワークで弾くものです。
頭と首、肩、腰、股関節などの「つなぎ目」が固まると、ぎこちない動きになります。
また、音の大きさは「どのくらい強く押すか」ではなく、「どのくらいの速さで鍵盤を下げるか」で決まることも覚えておいてください。
ステップ2:よくない動きのクセを直そう
こんなクセはありませんか?
- 弾くときに肩がぎゅっと上がる
- 手首がガチガチに固まる
- 弾いていない指もピンと張っている
- 息を止めて弾いている
これらは全部「がんばりすぎ」のサインです。下記のことを意識して、リラックスした動きを心がけましょう。
- 頭を自由に:頭が軽やかに動けると、背骨全体が自然に伸びます
- 腕は「ぶらんぶらん」:肩から脱力して、自然にぶら下がる感覚で
- 手首は「しなやか」に:柳の枝のように、固めずに保ちます
- 指は「自然なカーブ」:卵を軽く握るような楽な形をキープ
ステップ3:全身への「気づき」を育てよう
音楽に集中するだけでなく、「今、肩に力が入ってないかな?」「呼吸は楽にできているかな?」といった身体全体への「気づき」も大切です。
練習のコツ
- ゆっくりから始める
- 難しい箇所は小さく区切って練習
- 疲れたらこまめに休憩
両手で弾けない問題は、正しい身体の使い方を知り、無駄な力を抜いて、身体全体の協調性を高めることで必ず解決できます。
壁③: 練習時間が取れない
「練習時間がない」——これは大人のピアノ学習者の多くが抱える悩みです。
仕事、家事、育児、介護…日常のタスクに追われる中で、「毎日1時間練習」という理想論は、もはや現実的ではありません。
しかし、効率的な練習設計と習慣化の技術を組み合わせれば、1日5分からでも確実に上達することは可能です。
効率的な練習設計
練習は計画的に取り組むことで効率的になります。
習慣化を成功させる「環境設計」
効率的な5分練習を実現するには、まず環境を整えることから始めましょう。
楽譜は常に譜面台に開いたままにして、椅子の高さは一度決めたらマスキングテープで印をつけておきます。メトロノームも電池を入れたまま手の届く場所に置き、鉛筆と消しゴムも譜面台に常備しておきます。
こうした物理的な準備によって、練習を始めるまでの時間と障壁を限りなくゼロに近づけることができます。
心理的なハードルを下げることも重要です。
「完璧に弾かなければ」という思い込みを「今日は3回トライすればOK」に変え、「30分は練習しないと意味がない」という固定観念を「5分でも立派な練習」という現実的な目標に置き換えましょう。
毎日練習できなくても、週4日できれば十分合格点です。
練習を習慣化する秘訣
習慣化の鍵は、既存の生活リズムに練習を組み込むことです。
朝のコーヒーを飲み終わったらすぐにピアノに向かう、夕食の準備前の10分を練習時間にする、子どもを寝かしつけた直後やお風呂から上がったタイミングを活用するなど、すでに確立されている日常の流れに練習を接続させることで、意志の力に頼らない習慣を作ることができます。
進歩を可視化することも、モチベーション維持に欠かせません。
カレンダーに練習した日は○、できなかった日は×をつけるだけでも、練習継続への意欲が湧いてきませんか?
月末に練習時間の合計を計算したり、月1回同じ箇所を録音して比較したり、テンポの向上を数値で記録することで、確実に前進していることを実感できるでしょう。
ピアノがない場所でもできる練習
ピアノがない場所ではイメトレが有力です。
例えば、旅行に出かけて長時間練習ができなかったとします。
この間、イメトレを重ねておくと、後で練習しなかった不足分を取り返せるという研究結果があります。
壁④: 音が汚い
「なんだか音が汚い」という悩みもまた、多くの大人のピアノ学習者が抱える問題です。
しかし、自身の奏でる音が汚いと認識できていることは素晴らしいことで、音色の良し悪しを判断できる耳が育っている証拠です。
そのような自覚がある方にもし今やるべきことがあるとしたら、理想の「キレイな音色」を作るためのテクニックを習得することに集中することでしょう。
下記に、汚い音の原因と、それを解決するテクニックを紹介していきます。
汚い音の原因とは?
まず、不快に感じる「汚い音」の主な原因は様々ですが、一例として必要以上に力が入った弾き方にあります。
この弾き方の特徴と解決策は以下の3点です。
特徴①: 指が鍵盤から離れすぎている
音を出す前の過度な構えは、指と鍵盤の間に隙間を作り、汚い音の原因となります。なるべく鍵盤の近くに指を置いてから音を出すよう意識しましょう。
特徴②: 指先が潰れてしまう
指の真ん中あたりで弾くと、指先が潰れ「下に押しつぶしたような音」になります。人が心地よいと感じる「上に伸び上がる音」を出すには、指の一番先端を意識して使うことが重要です。
特徴③: 鍵盤を下げるスピードが速すぎる
速く鍵盤を下げるほど乱暴な音が出やすいため、意識的に打鍵のスピードをゆっくりにすると、柔らかく綺麗な音になります。
これらのテクニックは、主にアコースティックピアノで効果が顕著です。電子ピアノはもともと綺麗な音が録音されており、これはこれで素晴らしいことなのですが、弾き方に関わらず綺麗な音が出やすいのです。
練習で効果を実感しにくいかもしれません。
そこで、普段電子ピアノを使っている方は、月1回程度スタジオ等をレンタルしてアコースティックピアノにふれる機会を作ることをおすすめします。
そこで自分の音色を確認しつつ、上記3つの問題と解決策を分析してみてください。
壁⑤: モチベーションが続かない
「うまくなりたい」という漠然とした目標、完璧主義による進捗の見えなさ、映像で見るプロの演奏との比較による落ち込み…こういったことはモチベーションを失う典型的なパターンです。
私は以前、YouTubeにピアノを継続するために必要なことという動画を出しました。この動画では、ピアノのモチベーションを長く維持する方法についても紹介しています。
詳しくは動画を御覧いただきたいと思いますが、長い間ピアノを続けるモチベーションを維持するには、次のようなことを意識してみるといいでしょう。
達成感を大切にする
ピアノを練習する目的は、ただ上達することだけではありません。
楽しく演奏したり、好きな曲を弾いたり、新しいスキルを身につけたりすることで、達成感や喜びを感じることが大切です。
達成感は自信を与え、やる気を高め、次の練習への積極性につながります。
- 具体的な目標を設定する: 漠然と時間を過ごすのではなく、「この曲を通しで弾けるようになる」「この部分をテンポよく弾けるようになる」など、何をどうできるようになりたいかを明確にしましょう。目標が具体的であるほど、達成感を感じやすくなります。
- 目標を細かく分割し、段階的に達成する: 例えば、曲をいくつかのセクションに分け、それぞれが弾けるようになるたびに自分を褒めることで、頻繁に達成感を味わい、モチベーションを維持できます。
- 客観的なフィードバックを受ける: 先生や友人に演奏を聞いてもらったり、録音・録画して見直したりすることで、自分の良い点や改善点が明確になり、成長を実感できます。他者からの賞賛や励ましも達成感を高めます。
練習のルーティンを作る
毎日決まった時間や方法で練習することで、ピアノを習慣化し、楽しさや達成感を感じやすくなります。
- 練習に適した時間を見つける: 一日のスケジュールを見直し、朝起きてすぐ、昼休み、食後など、自分が集中できる時間帯を確保しましょう。
- 練習をスケジュールに組み込む: 確保した時間帯に意識的にピアノ練習を入れ、Googleカレンダーやリマインダーで通知を設定すると効果的です。SNSなどで練習することを宣言するのもモチベーション向上に繋がります。
- 練習内容を事前に決める: 目標やレベルに合わせて、自分の好きな曲や先生に選んでもらった曲など、楽しく練習できるものを選びましょう。練習時間や順序を決めておくことで、効率的な練習が可能になります。
- 練習記録をつける: 日誌や録音で自分の進歩や成長を記録し、振り返ることで、自信や達成感を感じ、次の目標や改善点も明確になります。Stud Plusのようなアプリも推奨されています。
- 隙間時間を利用し、毎日短時間でも継続する: 毎日5分でも良いので継続することが非常に大切です。
音楽を聴くこと
見落とされがちですが、音楽を聴くことはピアノ学習において最も基本的で重要なことの一つです。
- 憧れや目標を持つ: 音楽を聴くことで「いつかあんな風に弾きたい」という憧れや具体的な目標が生まれ、練習への情熱や意欲が湧いてきます。
- 感動する体験を忘れない: 音楽の原点である「感動」を忘れてしまうと、音楽に向き合うことがより一層辛いものになります。苦しい時は一度ピアノから離れ、音楽を聴くという原点に立ち返りましょう。インターネットの普及により、いつでも素晴らしい演奏に気軽に触れることができます。
- 構成要素に注意して聴く: 音楽を聴く際に、メロディー、リズム、ハーモニーといった構成要素に注意を向け、好きなピアニストの演奏を参考に、自分の目指す音楽像を明確にしていきましょう。
これらの秘訣、特に「目標を持つ」こと、そして「音楽に感動する」という体験を大切にすることが、ピアノを長く継続するための鍵となります。感動は音楽の本質であり、ピアノを弾くための動機にもなるからです。
まとめ:5つの壁を乗り越えて、理想の演奏へ
ここまで、大人のピアノ学習者が直面する「5つの壁」とその解決策をお伝えしてきました。
今回ご紹介した5つの壁と解決のポイント
- 譜読みが遅い → 拍子を先に掴み、音符の関係性とパターンで読む
- 両手で崩れる → 全身の協調性を意識し、無駄な力を抜く
- 練習時間がない → 5分でも効果的な練習設計と環境づくり
- 音が汚い → 鍵盤に近い位置から、指先を使って適切な速度で打鍵
- モチベーションが続かない → 小さな達成感を積み重ね、音楽の感動を忘れない
これらの壁は、実は多くのピアノ学習者が通る道です。
しかし、壁にぶつかることは、皆さんが確実に前進している証拠でもあります。
大切なのは、完璧を求めすぎないこと。毎日5分でも鍵盤に触れること。そして何より、音楽を楽しむ心を忘れないことです。
昔から憧れていたあの曲、子どもの頃に演奏してみたかったメロディー…それらは今からでも必ず手の届くところにあります。
年齢や経験は関係ありません。
皆さんのピアノ人生がより良いものになることを願っています。