
エチュードより弾きやすい?ショパンのプレリュードおすすめ5曲

エチュードの陰に隠れたプレリュードの魅力

こんにちは!かなくぼピアノ教室、講師の金久保です!
「ショパン エチュード 難しい」と検索したことはありませんか?
ピアノを学ぶ多くの人にとって、ショパンのエチュードは憧れの存在です。「革命」「黒鍵」「別れの曲」など、誰もが一度は耳にしたことがある名曲の数々―しかし、いざ楽譜を開いてみると、その技術的な要求の高さに圧倒されてしまう方も多いのではないでしょうか。
確かに、ショパンのエチュードOp.10とOp.25の全24曲は、ピアノ学習者の中でも高度なレベルに達した人の必須課題として君臨しています。音楽大学の入試課題曲として指定されることも多く、プロのピアニストを目指す人にとっては避けて通れない道でもあります。その圧倒的な存在感ゆえに、巨大な壁のように感じていらっしゃる方も多いかもしれません。
しかし、ちょっと待ってください。
ショパンが残した作品は、エチュードだけではありません。実は、同じく24曲からなる24のプレリュードOp.28という素晴らしい作品集があることをご存知でしょうか。エチュードの陰に隠れがちなこのプレリュード集には、中級者でも十分に取り組める美しい作品が数多く含まれているのです。
今回は、「ショパン プレリュード おすすめ」の5曲を厳選してご紹介します。
なぜプレリュードが見過ごされがちなのか
そもそも、なぜプレリュードはエチュードほど注目されないのでしょうか。その理由はいくつか考えられます。
まず、エチュードが「練習曲」という名前でありながら、高度な音楽性を持つ作品として確立されたことが挙げられます。
リストやラフマニノフなど、後の作曲家たちもショパンのエチュードに影響を受けて素晴らしい練習曲を書きました。
この流れの中で、エチュードは上級者の登竜門として、ピアノ教育の中で特別な地位を獲得していったのです。
一方、プレリュードは「前奏曲」という名前が示すように、本来は何か別の曲の前に演奏される短い導入的な音楽を指していました。
バッハの「平均律クラヴィーア曲集」のプレリュードとフーガのように、プレリュードは主役というよりは脇役的な印象を与えがちです。
実際、ショパンはOp.28に「プレリュード」というタイトルを与えたのも、バッハの概念をロマン派的に再解釈し、前奏曲のみの連作として創出したからと言えるでしょう。
ショパンのプレリュードは独立した作品として完成されており、それぞれが独自の世界観を持っています。
また、24の調性すべてを網羅するという独特な構成も、作品集全体の統一感を薄めている要因かもしれません。
長調と短調が交互に現れ、五度圏に従って配列されたこの作品集は、バッハへのオマージュとも言われています。
しかし、この学術的な側面が、かえって一般のピアノ学習者には取っつきにくい印象を与えているのかもしれません。



それに、エチュードとプレリュードでは、作曲のコンセプトも大きく異なります。比較すること自体が野暮だと言われると、それもその通りかもしれません…。
プレリュードこそ中級者の味方である理由
「ショパン エチュード 難しい」と感じている中級者の方にこそ、プレリュードをおすすめしたい理由があります。
最大の魅力は、技術的難易度の幅広さです。
24曲のプレリュードには、初級後期から上級まで、さまざまなレベルの作品が含まれています。
例えば、今回ご紹介する第4番ホ短調は、ゆったりとしたテンポで技術的には比較的易しく、中級者でも十分に取り組めます。
一方で、第16番変ロ短調のような超絶技巧を要する作品もあり、自分のレベルに合わせて選曲できるのが大きな利点です。
また、多くのプレリュードは2~3分程度の短い曲です。エチュードのように4~5分かかる曲と比べて、集中力を保って練習しやすく、負担も軽減されます。
発表会やコンクールでも、プログラムに組み込みやすいのは嬉しいポイントです。短い中にショパンのエッセンスが凝縮されているため、限られた練習時間でも充実した学習ができるでしょう。
さらに重要なのは、プレリュードを通じてショパンの音楽性を無理なく体験できることです。
エチュードが特定の技術習得を目的としているのに対し、プレリュードは純粋に音楽的な表現を追求した作品が多く、ショパン特有のメロディーの美しさ、和声の豊かさ、詩的な情緒を存分に味わえます。
これは、将来的にバラードやスケルツォ、ソナタなどの大曲に挑戦する際の良い準備にもなります。
おすすめプレリュード5選
それでは、中級者にぜひ挑戦していただきたい「ショパン プレリュード おすすめ」の5曲を、難易度順にご紹介していきます。
①Op.28-4 ホ短調 難易度: ★★☆☆☆
まず最初におすすめしたいのが、第4番ホ短調です。
わずか25小節という短さながら、ショパンの深い哀愁が込められた名曲です。
右手の旋律は単音で動きも少なく、技術的には最も取り組みやすい作品の一つと言えるでしょう。
この曲の魅力は、何といってもその和声進行の美しさにあります。左手の和音が少しずつ変化していく様子は、まるで夕暮れの空の色が刻々と変わっていくような情景を思わせます。
ショパンの葬儀で演奏されたという逸話も有名で、静謐な美しさの中に深い悲しみが宿っています。
練習の際は、左手の和音をしっかりとレガートでつなぎ、各和音の響きを十分に味わいながら演奏することが大切です。
ペダルの使い方も重要で、和声の変化に応じて適切に踏み替える技術を身につけられます。
②Op.28-3 ト長調 難易度: ★★★☆☆
第3番ト長調は、疾走感のある左手の16部音符が特徴の軽やかな作品です。短いですが、流れるような伴奏パターンが特徴的で、その上を右手のメロディーが優雅に歌います。
技術的なポイントは、左手の均一な16分音符の動きを保つことです。
指の独立性と手首の柔軟性が求められますが、エチュードほどの速度は要求されないため、中級者でも十分に習得可能です。
練習のコツとしては、まず左手だけをゆっくりと、正しい音程、タイミングなどをぴったり正確に弾けるようにすることが重要です。
徐々にテンポを上げていき、最終的には流れるような自然な動きを目指しましょう。
右手のメロディーは、左手の伴奏に乗せるように軽やかに歌わせることで、全体のバランスが整います。



次の4番と連続して弾くと、2曲の間にストーリーを感じることができます。発表会などでは2曲セットで弾くのもおすすめです!
③Op.28-15 変ニ長調「雨だれ」 難易度: ★★★☆☆
プレリュードの中で最も有名な作品の一つが、第15番「雨だれ」です。
約5分という、この曲集においては比較的長い演奏時間を持ち、ABAの三部形式という明確な構成を持っています。
変ニ長調の穏やかな主部と、嬰ハ短調の劇的な中間部のコントラストが印象的です。
この曲の特徴は、全編を通じて鳴り続ける同音連打です。
雨だれを表現するこの音型は、主部では変イ音(ラ♭)、中間部では異名同音の嬰ト音(ソ♯)として現れます。
技術的には、この同音連打を単調にならないよう、場面に応じて音色や強弱を変化させることが重要です。
特に中間部では、左手の重厚な和音と右手の連打が対話するような表現が求められます。情熱的でドラマティックな中間部から、再び静かな主部へ戻る部分の表現は、演奏者の音楽性が問われる箇所でもあります。
④Op.28-21 変ロ長調 難易度: ★★★★☆
第21番変ロ長調は、美しいメロディーラインが魅力の作品です。
右手の旋律は、まるでオペラのアリアのように歌い上げられ、ショパンの持つイタリア的な歌心が存分に発揮されています。
この曲の技術的な課題は、左手の重音と広い跳躍です。
低音と和音を交互に弾く左手のパターンは、手の移動を素早く正確に行う必要があります。
練習のコツは、重音のレガート奏法に対する意識と、跳躍の距離を体で覚えることです。
重音は、徹底的にレガートを意識する代わりに、亀の歩みのごとくテンポを落として行いましょう。
今弾いている音と、次の音の響きが重なり合うように、徹頭徹尾意識して練習します。
跳躍の練習は、目で鍵盤を追うのではなく、腕の動きと指の感覚で位置を把握できるようになることが大切です。
また、左手はあくまでも伴奏であることを忘れず、右手のメロディーを邪魔しない程度の音量に抑えることも重要です。
ペダルは深めに使い、豊かな響きの中で旋律を美しく歌わせましょう。
⑤Op.28-24 ニ短調 難易度: ★★★★★
最後にご紹介するのは、プレリュード集の締めくくりとなる第24番ニ短調です。
情熱的で劇的なこの作品は、24曲の中では特に技術的に難しく、中級から上級への橋渡しとなる作品と言えるでしょう。
左手の音域の広いアルペジオが全編を通じて続き、その上で右手が力強い旋律を奏でます。
このアルペジオは単なる伴奏ではなく、嵐のような情熱を表現する重要な要素です。
技術的には、左手の素早い動きを保ちながら、音の粒を揃えることが求められます。
また、クライマックスに向かって音楽が高揚していく様子を表現するため、スタミナ配分も重要です。最後の3連符による下降音型は、まさに圧巻の終結部で、聴衆に強い印象を残すことができるでしょう。
この曲をマスターできれば、エチュードへの挑戦も視野に入ってくるはずです。
まとめ:プレリュードから始めるショパンの世界
「ショパン エチュード 難しい」と感じて諦めかけていた方も、プレリュードなら新たな一歩を踏み出せるのではないでしょうか。今回ご紹介した5曲は、それぞれ異なる魅力と技術的課題を持っており、段階的にショパンの音楽世界を探求していくことができます。
プレリュードの学習は、将来的にエチュードへステップアップするための優れた準備にもなります。例えば、第3番で身につけた左手の16分音符の技術は、エチュードOp.10-12「革命」の学習にも役立ちます。
また、プレリュードは演奏会のレパートリーとしても非常に有用です。短い作品が多いため、プログラムの最初や曲間に配置しやすく、聴衆の心を掴む効果的な選曲が可能です。特に「雨だれ」は認知度も高く、多くの聴衆に親しまれている作品なので、発表会などでも好評を得やすいでしょう。
何より重要なのは、プレリュードを通じてショパンの多面的な魅力を知ることができることです。激情的な面、瞑想的な面、詩的な面、技巧的な面など、ショパンという作曲家の持つさまざまな顔を、24のプレリュードの中で体験することができます。これは、ノクターン、ワルツ、マズルカ、ポロネーズなど、他のショパン作品への理解を深める上でも貴重な経験となるはずです。
「ショパン プレリュード おすすめ」の5曲から始めて、徐々に他の作品にも挑戦していけば、いつかはあの憧れのエチュードも夢ではありません。まずは今回ご紹介した作品の中から、自分の心に響く1曲を選んで、じっくりと向き合ってみてはいかがでしょうか。ショパンの美しい音楽世界が、きっとあなたを温かく迎え入れてくれることでしょう。