
自分の演奏をAIに聴かせてアドバイスを求めても意味はない

金久保皆さんこんにちは!
かなくぼピアノ教室、講師の金久保です。
突然ですが、自分の演奏をスマホで録音して、ChatGPTなどのAIに聴かせてアドバイスを求めたことはありませんか?
最近、このような使い方をしている方を本当によく見かけます。それだけではありません。「AIに演奏を聴かせれば的確なフィードバックがもらえる」と、いかにもそれが正しい練習法であるかのように発信している方も多々見かけます。
先にお伝えしておくと、私はAIを毎日仕事に使っていますし、ピアノの先生向けにAI活用の発信もしているくらいのAI推進派です。
そんな私だからこそ、はっきり言わせてください。
自分の演奏をAIに聴かせてアドバイスを求めても、意味はありません。
今回は、その理由をできるだけ具体的にお話しします。
AIは演奏を聴けない
まず知っておいていただきたいのは、AIによっては、音声ファイルをそもそも「聴けない」ものがあるという事実です。
録音を添付して「アドバイスをください」と送ると、もっともらしい返事が返ってきます。「テンポの揺れに気をつけましょう」「左手が強すぎるかもしれません」—— 一見、ちゃんと聴いてくれたように見えますよね。
しかし実際には、音声を処理できないAIが返しているのは、曲名やあなたの質問文から生成したそれっぽい一般論です。演奏は1秒も聴かれていません。
では、音声を処理できるAI(ChatGPTの音声対応モデルなど)なら大丈夫かというと、残念ながら問題は残ります。
返ってきたコメントが「本当にあなたの演奏を聴いた結果」なのか、「その曲についてありがちな指摘」なのか、受け取る側には区別がつかないのです。
例えばショパンのノクターンなら、「ルバートをもっと自然に」「左手の伴奏を抑えて」と言っておけば、誰の演奏に対しても大体当たってしまいます。占いの文句が誰にでも当てはまるのと同じ構造です。
その理由: AIは「言語化能力が高すぎる素人」
では、なぜこうなるのでしょうか?
理由はAIの仕組みそのものにあります。
ChatGPTなどのAIは、膨大な文章データからそれっぽい言葉の続きを予測して生成する仕組みです。ピアノ奏法について流暢に語れるのは、奏法について書かれた文章や文献を大量に学習しているからであって、AI自身がピアノを弾けるわけではありません。
鍵盤に触れたことも、脱力に苦労したことも、本番で手が震えたこともない。それなのに、言葉だけは専門家のように紡げる。
いわばAIは、言語化能力が高すぎる素人なのです。
考えてみてください。
ピアノを一度も弾いたことがないけれど、話だけは上手な人に、自分の演奏のアドバイスを求めて、何の意味がありますか?
そのアドバイスを受けて、嬉しいですか?
演奏指導とは、音を聴くことだけではありません。その人の手の形、身体の使い方、癖、性格、生活の中で取れる練習時間——そうした全体を見て、「今のあなたには、まずここ」と優先順位をつけることです。これは、自分の身体で音を出してきた人間の講師だからこそできることで、AIの「耳」はまだその代わりができません。
ピアノは、人から人へ伝えてこそ価値があるものだと、私は考えています。
まとめ
誤解しないでいただきたいのですが、これは「AIを使うな」という話ではありません。
- 曲の背景や作曲家について調べる
- 練習の段取りを一緒に考えてもらう
- 音楽用語の意味を質問する
こうした使い方なら、AIは非常に頼りになる相棒です。問題は使いどころ。「演奏を聴いてもらう」ことだけは、AIの守備範囲の外なのです。
自分の演奏へのフィードバックが欲しくなったら、それは人間の耳の出番です。録音をAIに送る代わりに、信頼できる先生に聴いてもらってください。もちろん、当教室の体験レッスンでお待ちしています、というのはここだけの話です。
最後に
noteでは、ピアノの先生向けに「AIとの正しい付き合い方・活用法」について発信しています。「AIに何を任せて、何を任せないか」に興味のある方は、よろしければこちらもご覧ください。
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